「介護職として数年働いているけど、なかなか給料が上がらない。どうしてだろう」と疑問を持っている人も多いのではないでしょうか。
介護職員の給料は上がりにくい構造になっています。キャリアアップを視野に入れたうえで、計画的に自ら行動していく必要があるのです。
この記事では介護職の給料が上がりにくい理由や、給料を上げる方法、今後の展望について解説していきます。
介護職の給料が上がりにくい理由は?
介護職の昇給状況や昇給しにくい理由について解説します。
介護職の給料の現状
まず介護職の給料がどれくらい上がりにくいのか、昇給状況を見ていきましょう。
令和2年度の「介護従事者処遇状況等調査結果」によると、勤続年数1年目が283,480円、5~9年目が307,980円です。差額は24,500円であまり大きな差はありません。
10年以上になってようやく350,820円と、50,000円以上大きく上がっています。
勤続10年を超えないと給料が上がった実感を得にくい状況と言えるでしょう。
日本労働組合総連合会の調査結果では、2021年度4月時点の全企業の昇給額の平均は5,445円です。
比較すると介護業界の昇給率が低いことが分かります。
勤続年数で見るとあまり増加した印象がありませんが、平成31年の給与額と比較すると勤続年数に関わらず上昇しているのです。
介護業界の人手不足が深刻化する中で、処遇改善が行われている成果と言えます。
給料が上がりにくい仕組みになっている
決められた介護報酬の中から介護職の給料が捻出されるため、頭打ちになりやすいのが原因でしょう。
介護職の給料のもとになるのは介護報酬です。
介護報酬とは事業者が利用者に介護サービスを提供した対価として、市町村から支払われる報酬のこと。
原資は介護保険です。
利用者一人当たりの上限額が定められており、要支援・要介護度によって決まります。
また施設には利用定員数があるため、介護報酬×利用者数が収入となっているのです。
つまり、利用者の定員数と施設の規模で売上が決まるため、長年経営が続いてもあまり変わらないと言えるでしょう。
このような体制である以上、職員の給料アップも難しいのです。
職員にはデメリットに思える介護報酬制度ですが、利用者にとっては大きなメリットになります。
介護保険の被保険者であれば、少ない自己負担額で介護サービスを受けられるからです。
収入がなくなる老後でも、安心して暮らせるようになります。
逆に介護報酬制度がなくなると、介護サービスを受けたくても受けられない高齢者が増加してしまうでしょう。
介護職の給料を上げる4つの方法
上述した通り、介護職は日々の業務に励むだけでは給料が上がりづらい仕事です。給料を上げるには、次のようなことに挑戦すると良いでしょう。
1.資格を取得して資格手当を得る
2.キャリアアップして役職手当を得る
3.好待遇の施設に転職する
4.副業を始める
資格を取得して資格手当を得る
資格所有者ほど平均給与額が上がりやすいです。「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」をもとに、各介護従事者の給料を表にまとめました。
上記の通り、資格のない場合と比べて明らかな差があります。
介護福祉士なら無資格の職員と比べて平均53,330円もアップするのです。
国家資格で待遇が良くなるうえ、職場のリーダー的業務を担当できるので、やり甲斐も得られるでしょう。
勤務先の事業所によっては、実務者研修や資格取得の費用を補助してくれる場合もあります。
また社会福祉協議会には貸付制度も設けています。
条件を満たすと返済免除になり、金銭的な負担なしに取得を目指すことも可能です。
特にスマート介護士は、介護ロボットやICTを使って介護業務の効率化を目指す資格です。
これからの介護業界に欠かせない存在と言えるので、挑戦して損はないでしょう。
キャリアアップして役職手当を得る
主任やリーダー職になると役職手当がつく事業所や施設も多くあります。
差はありますが3,000円~10,000円ほどつくでしょう。
一般の職員よりも昇給ペースや基本給がアップし、賞与が高くなるケースもあります。
リーダーショップやコミュニケーション力がある、職員が働きやすい仕組みやルールを考えるのが得意、事務仕事もある程度こなせるといった人は、管理職を目指すのもおすすめです。
上記のスキルやマネジメント力を兼ね備えた人材はまだあまり多いと言えないため、どこの施設に転職しても重宝されるでしょう。
基本給や手当、昇給などの基準は事業所によって異なります。
より条件の良い事業所や施設を探して転職するのも、効率よく年収を上げる方法の一つです。
規模の大きい事業所は、施設で必要な福祉用品を一括購入して安く調達するなど効率の良い経営を行えます。
その結果、規模の小さい事業所より職員の給料を上げやすいのです。
今勤めている職場の給与体制に限界を感じているなら、転職を考えてみましょう。
転職サイトを利用する際は、介護職専門のキャリアアドバイザーがサポートしてくれるところがおすすめです。
書類の添削や面接対策も含めて、総合的な支援サービスを受けられます。
本人の希望はもちろん、強みや適性をしっかり把握したうえで、マッチした転職先を紹介してもらえるでしょう。
副業を始める
自宅で無理のない範囲で取り組める副業を探すのも一つの手です。
パソコンがある程度使えるならクラウドソーシングサービスで資料作成や文字起こし、商品レビューの作成などが良いでしょう。
イラストが描ける、動画の編集ができるなど、得意なことがあるならスキルを販売できるサイトを利用するのもおすすめです。
ただし、副業は本業に影響が出ない程度に留めておきましょう。
介護職の仕事は勤務形態が不規則だったり重労働だったりと、精神的・身体的に負荷がかかりやすいです。
「副業のことが気になり、職場でミスをしてしまった」なんてことにならないよう、バランスを考慮することが重要になります。
介護職の給料は上がる?今後の展望を解説
2025年問題に向けて、介護職の人材確保・処遇改善が重要な課題です。
令和3年度の介護報酬改定では、次のような決定がなされました。
・平均の賃金改善額の配分ルールで、リーダー級の介護職員の給与を上げやすいように見直し
・介護福祉士の割合や、勤続年数の長い介護福祉士の割合が高い事業者を評価する区分を設定
・育児や介護で休業取得した職員の代わりに、非常勤職員を確保する
・時短勤務制度などを利用した場合、週30時間以上の勤務で常勤として扱う
・すべての介護サービス事業者にハラスメント対策強化を求める
これらの内容からも分かる通り、処遇・環境改善、仕事と育児の両立支援、ハラスメント対策強化など、介護職員がより働きやすい環境づくりを推進しているのです。
段階的ではありますが、今後も介護職員の給与水準が上がっていくと言えるでしょう。
まとめ
介護職員の給与の原資は介護保険です。
介護報酬制度により、利用者一人当たりの利用上限額と施設規模で収入が決まるため、職員の給与を大幅に上げるのは難しい構造になっています。
給料を上げるには、資格取得やキャリアアップで手当をつける、好条件の施設に転職する、副業を始めるなどが効果的です。
規模の大きい施設や事業所ほど効率の良い経営が行われている傾向があるので、給与水準も高くなりやすいと言えます。
令和3年の介護報酬改定では、処遇や環境改善のためにさまざまな事項が見直されました。2025年問題に向けて介護職の需要はますます高まっていくため、今後も段階的に給料が上がっていくことが期待できるでしょう。