【事例も紹介】高齢者虐待防止法とは?

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近年問題になっている高齢者虐待ですが、高齢者虐待がなぜ起こるのか、どのような虐待が行われているのか知らない人が大半だと思います。

高齢者を虐待から守るための高齢者虐待防止法という法律があり、自覚がなくても高齢者虐待の加害者になっている可能性もあるため、悩んでいる方は多いでしょう。

そこで本記事では、高齢者虐待防止法や高齢者虐待の種類、実際に起きている高齢者虐待の事例、高齢者虐待防止法の3つの柱について徹底解説します。

高齢者虐待防止法とは

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高齢者虐待防止法とは、高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援に関する法律です。

高齢者の尊厳の保持を大きな理念としており、高齢者の尊厳の保持を妨げる高齢者虐待の防止を無くすために必要な措置を決めています。

高齢者の定義としては、65歳以上の方と65歳未満の方であっても、養護施設に入所しており、介護を受けている障害者は高齢者として扱うため、高齢者虐待防止法が適用されます。

高齢者虐待の種類

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虐待は暴力を振るうというイメージがありますが、虐待にも様々な種類があり、高齢者虐待の種類は主に5種類あるとされています。

身体的虐待
介護放棄(ネグレイド)
心理的虐待
性的虐待
経済的虐待

の5種類の虐待について徹底解説します。

身体的虐待

身体的虐待とは、傷やアザなどの外傷が生じる可能性のある暴力を加え、外部との接触を意図的に継続して遮断する行為のことです。

身体的虐待の例として、殴る、蹴る、火傷を負わせる、打撲させる、つねる、平手打ちする、無理矢理食事を口に入れるなどがあります。

このような外傷を負わせる行為だけでなく、ベッドに縛りつける、意図的に薬を過剰に服用させるなどの行為も身体的虐待に含まれます。無意識に虐待になっている例としては、栄養を取らないといけないため、無理矢理食事を口に入れる行為などがありますが、食事を食べないのであれば点滴で栄養を摂取することもできるので、医者に相談するようにしましょう。

介護放棄(ネグレイド)

介護放棄(ネグレイド)とは、意図的か結果的か関係なく介護や世話を放棄・放任し、高齢者の生活環境や身体・精神的状態を悪化される行為のことです。

介護放棄(ネグレイド)に該当する行為としては、健康状態が悪化するほど水分補給や栄養摂取を行わないことや治療が必要な状態であるにも関わらず、病院に連れて行かないなどの行為が挙げられます。

高齢者の介護を放棄することが介護放棄(ネグレイド)に該当するため、介護している高齢者が他の利用客に対して暴力を振るうなどの行為に及んだ時に、解決策を講じないことも介護放棄(ネグレイド)に該当します。

心理的虐待

心理的虐待とは、脅しや侮辱するような言葉、威圧的な態度、無視、嫌がらせなどを行うことによって精神的、情緒的苦痛を与える行為のことです。

心理的虐待に該当する行為として、怒鳴る、罵る、老化現象などを嘲笑する、高齢者を意図的に無視するなどの行為が該当します。

心理的虐待は直接悪口をいうのではなく、他の利用者に対して高齢者や家族の悪口を言いふらすという行為も該当します。

性的虐待

性的虐待とは、高齢者にわいせつな行為をすること、またはわいせつな行為をさせることです。

性的虐待は高齢者に対してわいせつな行為をすることですが、高齢者が何かミスをした時に罰として裸にして放置するなどの行為も性的虐待に該当します。

経済的虐待

経済的虐待とは、本人の合意がないにも関わらず、財産や金銭を使用したり、本人の希望する金銭の使用を理由もなく制限する行為のことです。

経済的虐待に該当する行為としては、介護施設の職員が金品を要求したり、年金や貯金を本人の意思・利益に反して使用するなどの行為が該当します。

高齢者虐待の事例

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高齢者虐待は年々増加してきており、大きな問題となっていますが、様々な理由で高齢者虐待が行われています。

今回は、高齢者虐待の事例をいくつか紹介します。

特別養護老人ホームでの心理的虐待

被害者は入居者の男性(91歳)で加害者は20代の男性介護職員で転職して介護の仕事に就いて2年目の方です。

虐待が発見されるまでの経緯としては、施設職員が働いている特別養護老人ホームでの加害者の態度や言葉使いが乱暴であり、看護師や施設長に訴えたことから始まりました。

看護師や施設長は取り合ってくれませんでしたが、市や地域の担当者が対応し、事実確認を行うことで虐待が発覚しました。

認知症の姑の介護によるストレスでの身体的虐待

被害者は女性(85歳)で要介護3(移動は自立、妄想・作語・幻視あり。認知症の程度:ランクIIIb)で虐待者は長男の妻(54歳)専業主婦です。

虐待が発見された経緯としては、被害者が通っていた通っていたデイサービスで入浴をする際に体にあざができていたことや腕や顔にもあざが目立つようになったことから発覚しました。

介護者である長男の妻の指示に従わないときなどに、暴言や暴力などの虐待があり、デイサービスの準備をする際に引きずり回すなどの虐待も行なっていました。

娘夫婦からリハビリを強要されるという身体的虐待

被害者は女性(79歳)要介護1(自宅内では、歩行の際に所々物につかまる状態、外出時はシルバーカーを利用して移動は自立。入浴、排泄、食事も自立している。認知症の程度:ランクII)で、加害者は長女の夫(58歳)会社員です。

高齢者虐待防止法の3つの柱

高齢者虐待防止法には3つの柱があり、これらの柱によって虐待の早期発見や防止などに取り組むことができます。

本記事では、その3つの柱について徹底解説します。

介護スタッフ

介護施設や介護サービスなどのスタッフは閉鎖された環境になっていることが多く、虐待があっても周りに気づかれないことが多いです。

そのため、地域住民と積極的に交流することができる機会を作り、外部からの目を入れるようにすることで虐待の早期発見や防止に繋げることができます。

市町村の職員

高齢者虐待防止法は市町村の諸君に向けた取り組みを行なっており、この取り組みは虐待の通報窓口を多くの方に知ってもらうための活動を推進しています。

この取り組みの狙いとしては高齢者虐待防止法についての知名度を広げたり、市町村職員の法制度の理解度を向上させることです。

地域の方

高齢者の虐待を防止するためには、通報窓口や介護スタッフだけが気をつけるのではなく、地域住民の理解や協力をどれだけ得ることができるかが重要です。

情報を多くの方に知ってもらうために、地域住民に向けた広告などを作成する取り組みも行っています。

まとめ

本記事では、高齢者虐待防止法や高齢者虐待の種類、高齢者虐待の事例、高齢者虐待防止法の3つの柱について徹底解説しました。

介護は想像以上にストレスが溜まることもあるため、ストレスから虐待に及んでしまう可能性があり、健康のために制限することが虐待になっているケースもあります。

自分の体調と相談しながら、介護施設に任せるなどの対策を行うようにし、気が付かないうちに加害者にならないようにしましょう。

また、高齢者を虐待しているところを目撃したのであれば、警察に通報するか相談窓口に相談するなどの対処を行うことで対応してくれます。

近年問題となってきている高齢者虐待ですが、高齢者虐待防止法の存在を認知し、閉鎖された空間ではなく、第3者の目に届くようにすることで問題改善することができるでしょう。

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